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「主役はあなた」を引き出してくれるマイプロジェクトの力

9月24日(土)「まちの教室(伊那)」の午後授業では、午前授業の講師 金森さん(カタリ場事業部シニアマネージャー・文京区青少年プラザb-lab副館長)に引き続き講師を務めていただきました!授業は題して、「地域を変える、未来を変える『マイプロジェクト』に挑戦!!」。今回は、活発に行われたワークショップを中心に、授業を振り返りレポートをお届けします!

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*NPO法人カタリバが運営するマイプロジェクトとは?
2011年の東日本大震災により被災した子どもたちのために岩手県大槌町で始まった、放課後学校「コラボ・スクール」で生まれた活動の一つです。仮設住宅での生活は、中高生にとって勉強環境の確保が難しいという現状があります。コラボ・スクールは、学ぶ場所を失った中高生に学習指導、そして友達との交流の場を提供しています。その中で、自分の身の回りにある課題を見つけそれを解決するまでの一連の過程を学ぶ「マイプロジェクト」が始まり、今では全国に広がっているプロジェクト学習です。

話して、聴いて。
今回のワークショップでは、3人1組のグループに分かれ、1人が話している間ほか2名は「傾聴してあげる」ことを大切にします。
あなたには、何か実現したいことや問題意識を持っていて解決したいと思っていることはありますか?
マイプロジェクトでは、自分の身の回りのことを変えていくためにアクションを起こし、それがうまくいったかどうかを振り返るところまの過程で得る学びを重要視しています。
早速、ワークショップ冒頭では、自己紹介にあわせ、なんとなく今自分が関心を持っていることを交換する時間が設けられました。会場内で交わされる声に耳を傾けると、「動き始めたいと思っている何かしらのアイディアの種を持っているのだけれど、どう進めればいいのかわからない」という受講者の方がちらほら居る模様。すでにマイプロジェクトのスタートラインに立っている方もいるということですね!
さて、授業が進むにつれて、みなさんの心境や迷子に感じている状況はどのように変化してゆくのでしょう?

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人に話すことでビジョンが見えてくる。
(1)「Will」・・・自分が実現したいこと、解決したいこと、関心があることを書き出してみよう。
まずは、自分にとってのマイプロジェクトとはなんのか?を探し出すステップから始まります。実現したいと考えていることを書き出した「Will」たちをワークショップグループの2名に話してゆきます。
繰り返しになりますが、聴いている2名は、ただ聞くのでなく「傾聴する」ことを忘れてはいけません!自分のプロジェクト候補について話したくなる気持ちはぐっと抑えて、「なぜそれをしたいの?」といった質問も投げかけながらサポートをする側に徹するのです。

(2)「Can」・・・話を聴く2人は、当事者がプロジェクトを実現するために「できること」をバンバン提案してあげよう。
構想しているプロジェクトについて聴いてあげるステップの次は、聴く側の2名が「Can」(そのプロジェクトのためにすべきことやできること、こんなことしてみれば?)という提案をしてあげます。

上記の(1)(2)を、話し者(Willを発表する人)を交代しながら、お互いのプロジェクト候補について積極的に聴き合いました。
ワークショップ中、話し手が交代するあるタイミングで、
「自分のプロジェクトについて聴いてもらえてどうでしたか?」
と、金森さんが受講者のひとりに尋ねます。
すると「なんだか気持ちがいいですね」と返す受講者の方。
このやりとりを見て、今回の授業のミソの一つは、きっとココだなと私は気づきます。

みなさんは、誰かが「こんなことに興味があってね…」と話し出すとき、熱心に、あなたの話を聴いているよというサインを送っていますか?
そのサインの送り方が、ワークショップで行うよう心がけていた「傾聴する」「反応してあげる」「アイディアを面白がってあげる」こと。あ、聴いてくれてるな、話してもいいんだな、と感じると、自分のアイディアやプロジェクトに賛同してくれているような気分になりますよね。

(3)構想しているプロジェクトを人に話し、それに対してできることリスト「Can」をもらったら、実際の行動計画を作るステップへ移ろう。
この過程では、プロジェクトを実現するための「アクションを促す」こと目的として、①②の過程を生かしながら、A4の紙にプロジェクト内容・期日や実施日を書いてゆきます。具体的には、「2016年10月◯日 物件を見つける」などと、プロジェクトをよりアクションできる状態に落とし込むところまで。例えば、「すでに似たプロジェクトをしている人に会いに行く!」といった計画でもよいそうで、とにかく、小さなステップたちを明確にし、道筋を立ててゆきます。

(4)「Must」・・・プロジェクトと行動計画を2分以内で人に話してみて、そのプロジェクトを実現したい理由を堂々と伝えよう。
最後は、前段階で考えたプロジェクトと行動計画を人に話す過程ですが、その時、聴く側は「なんであなたがそれをやる必要があるの?」と、不明な点に切り込んでいきます。それに対して、話し手(プロジェクトを実現したい本人)は理由を説明できなくてはなりません。

「2分以内で」に重要な理由があることを金森さんは教えてくださいました!
実際にプロジェクトを行う時、誰かの協力が必要でその人に対してプロジェクトの説明をすることがあるかもしれません。人を巻き込みたい時、端的にわかりやすくプロジェクトの説明ができれば、相手を効果的に説得できますよね。金森さんの活動拠点b-labでは、中高生と触れ合う際、「ちょっとそれ1分で説明してみて!」「30分話しを聴いたけどよくわかんなかった!出直しね!」ということはよくあるのだそう!金森さんから「それいいね!やってごらん!」をもらい、マイプロジェクトに取り組みながら意気込んでb-labに通う中高生の姿が頭に浮かびます。

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聴いてくれる人がいるとできる気がする、そして行動がうまれてゆく。
金森さんは「聴いてくれる大人がいるんだなという気づきが、中高生が、次の一歩を踏み出すことにつながる。」と繰り返しおっしゃいます。
今回のマイプロジェクト授業の主役は、中高生ではなく受講者のみなさんです。年齢も背景も中高生とはまた異なりますが、マイプロジェクトの考え方は、当事者が誰であっても応用できる、学びにおける一つの戦略であるように思います。

熱心に聴いてくれる人がいると、自分の中に溜まっていた何かが自然と溢れ出すかのように、深いレベルで、実現したいプロジェクトを描くに至ったきっかけやつまずいている悩みを話し出す人もいました。言葉にして人に伝えることに対するブレーキのようなためらいが、「聴いてくれている」という気持ちよさによって少しずつ緩まっていくかのようです。一瞬でも、あなたの仲間ですよ!感が伝わると、心の支えを見つけられるだけでなく、行動も変わってゆくのですね。

肯定をしてあげることで、当事者が心の中で蓋をしてしまっている物事への思いと行動をゆっくり引き出す。
マイプロジェクトの底力とは、何かをしたい時の伴走者を見つけたり、次の一歩を踏み出す指針を見つけるツールになり得るという点かもしれません。
受講者のみなさんのマイプロジェクトが、今後どのように進行してゆくかもたのしみです!

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(まちの教室スタッフ 尾森明実)