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お金がすべてではない。なら、ギフトしあうことも1つの方法に。

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「経済」とか「お金」についてなんて、難しいの?って思う授業テーマ。午前中は、ものごころが付いた頃から何の疑問もなく使っている「お金」について考察してみませんか?というもの。それに対し、午後は「ギフトエコノミー(贈与経済)」について実際にアメリカで考案されたワークショップを実体験する授業。今回は、vol.050とvol.051を通しで参加してレポートします。
わたしにとって、ここ数年で違和感が強くなっている「消費のための需要の掘り起こし」や「数字だけの経済」について、感じている違和の理由が少しでも知れるといいなぁとの、淡い期待を胸に椅子に座りました。

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こんなに「お金」をじっくりと観察したことはあったかな~?

問い ・・・ 一万円札はなぜ「一万円」なのでしょうか?

そうなんだよな、、、一万円札も言ってしまえばだたの「紙」。では、なぜそれでおむすびを買ったり、電車に乗れたり、サービスを受けられたりするのか?先生の問いかけで、見てはいけないもの、考えてはいけないことの扉を開け始めている、、そんな気持ちとともに授業はスタートしました。

Tシャツに短パンというラフな服装で会場に現れたのが、今回の講師熊倉敬聡先生。この時点ですでに「経済のお話し=堅苦しい?」が崩れ去りました。それもそのはず、経済学の研究者ではなく、フランス文学・思想や現代アート・ダンスなどの研究、企画、実践などを行っているそうです。フランス文学を研究している中で出会ったのが、「すべて(宇宙)は、美学と経済学に要約される」という詩人 マルラメの言葉。文学や芸術を研究する人はこの中の「美学」を研究はしているけれど、「経済」について研究する人はいない、、、ということで、文学的切り口で経済の研究をされていたそうです。

軽妙な語り口で語られる貨幣と人間との関係性。そして、お金の観察。生まれてからこんなにも、意識してお札を観察したことはあったかな??観察すればするほどにお金に感じる「これは、お金ですよ~~~」というわざとらしさと、一部の人間のずるさとほとんどの人間の鈍感さ、、、。あれ?わたしたち、ずっと何かをかすめ取られていやしないか。
そして、貨幣誕生から鋳造、資本主義について。ある日突然、資本主義が生まれたのではなくて、連綿と続く経済活動の中の進化で生まれてきたんだということに、腑に落ちた。貨幣は人類の共同幻想であり共同幻想の上に成り立つ、そして共同の現実でもある。当たり前にあると思うと、疑うことを忘れてしまう。この「当たり前のことを疑う」ことが今、大切なのではないかと思に至る2時間でした。

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ギフトエコノミーの実践体験、ギフトサークル

午後も同じく、熊倉敬聡先生の授業。テーマは「ギフトエコノミー」。貨幣に縛られた経済活動にちょっと疑問を感じているわたしに、とって興味深々な内容です。そして、日本ではまだメジャーな活動ではないですが、アメリカで2008年くらいから行われている活動の「Gift Circle(ギフトサークル)」を実践的に体験です。

参加者みんなで、お題に合わせて話しをしていきます。
お題は、3つ。
(1)知り合う
(2)円くなって座る
(3)欲しいもの・こと/あげられるもの・ことを1人ずつはなす
*提供者は見返りを求めない/される方もされたからと言って何もしない

(1)の知り合うでは、名前・今はまっているものコト・今までの人生で一番大切なものコトを一人ひとり順番に話していきます。でも、時間が限られているので自分だけが話し過ぎないように気遣いながら。「声に興味があります」「大人の発達障害について」「人がいいと言っているものが気に入らない」などなど、、、わたしは、なんて言ったか忘れちゃいましたが(笑)。この時間のおかげで、欲しいもの(want)やあげられるもの(gift)の話しに進んだ時にみんながそれぞれのために真剣に聞き入っているのが分かるくらいに、一体感が生まれました。きっと、床に座ってみんながつながっている感じも良かったのかもしれません。

(3)の欲しいもの・こと/あげられるもの・こと(実際には欲しいもので一周したあと、あげられるのもで一周)では、「飲み友だちが欲しい!」(笑)が多かったり、「人手が欲しい」「庭が欲しい」「グランセローズの観客を増やしたい」なんてのもあったり、「妻を一人で過ごせるようにしたい(時には子どもから解放してあげたい)」なんて暖かな気持ちのモノもあったりで、欲しいにはお金で買えないものが多かったように感じます。反対に、あげられるには「飲み友だちになれます!!!」が続出(笑)で、みんな飲み友だち欲しいんだなぁって。あとは、「休日にわたし貸します!」「友だち教えます」「びわの葉あげます」「広い心で相談にのります」などなど。ちなみに、わたしのあげますは「洋服のコーディネート相談のります!(女子限定)」「話し聞きます」の2つ。レポートを読んでくださっている方にも、差し上げますよ!

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コミュニケーションは自然に生まれる

授業終了後には、自然と参加者同士のコミュニケーションが生まれました。ギフトサークルのワークの中ででてきた「欲しい」と「あげる」のマッチングがその場で生まれたり、「ギフトサークルの活動をわたしの住むところでもやっていきたいです!」といった声も聞こえてきました。わたしのところには、あげますで掲げた「コーディネートします」を欲しいと言って女の子たちが集まってくれました!これは、かなりうれしい出来事です。貨幣という既成概念にとらわれずにだたもっているものを差し出し、またそれを必要としている人が受け取ってくれる。
お金に変えることのできないその人それぞれがもっている何かを、もしかしたらとなりにいる誰かが欲しいと思っているかもしれない。ただ、欲しいと思っていることも、あげたいと思っていることも声に出さないと伝わらない。そんな時に、このギフトサークルが間を取り持ってくれる。今の貨幣価値経済とともに、こんなやりとりが気軽にできる世の中になったら、、、と、想像するだけで明日にワクワクが増える気がしてなりません。

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―― 備考
「Gift Circle(ギフトサークル)」ってどうやるの?を知ることができる動画です。(注:英語です)
What’s a Gift Circle? A peek into the Oakland Gift Circle

(まちの教室スタッフ 寺島美佐子)