interview

この目の前にある食の「特別」に気づいてもらいたい

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今週末25日に迫った「しののい まちの教室」。午後授業の授業コーディネーター厚海さんに授業意図などを、厚海さんが運営されるTEISHABA KITCHENにて、お聞きしました。

今回の講師、粂さんはお仕事つながりだそうですね。

そうです、僕の仕事をやってくれたりしていて。今は、フリーのライターをしています。

どんな話が聞けそうなのか、お聞きしたいです。

「DINING OUT」という企画があるんですけど、佐渡島が成功例なんですが辺境といわれている限界地域の食と地域文化をつなげて、突然数日間だけレストランがオープンする仕掛けをつくっているんです。野外でイベントしたり、東京のお店で佐渡島特集を組んでもらったり。今まではプロジェクトだったんですが、「ONESTORY」っていう株式会社になったみたいです。(粂さんは)シェフのキャスティングとか、メニューの構成をディレクションしています。

(授業では)その話をまず聞いて、それをベースに話していきますか?

彼女は『東京カレンダー』『料理王国』とか食のトレンドを作る人。だけど、彼女の背景には地域性の強いものを持っていて、それでありながら最先端を発信しているのが面白いと思っています。僕も長野に生まれ育った時に、外に出たくて常に東京を目指していた。だけど、東京での生活が長くなって、東京を目指すこと自体がすごくナンセンスだと思うようになったんです。情報やトレンドの発信とか言われてるけどね。
だって、長野から東京を見たら、東京だって一地方じゃないですか。瀧内さん(インタビュワー/まちの教室スタッフ)はこういうとき、どういう言葉を使いますか?

僕は「地域」という言葉を使います。「地方」って中心がある言葉ですよね。

東京って、あらゆるモノの中心として見られがちなんだけど、長野とかの情報を東京に取りにいってしまったり、東京のトレンドを追いかけるのって、そもそも違うって思って。とはいえ、こういう時代だから都市とつながる必要は絶対にあるけど、自分を含めて東京をめざす以外のやり方を見つける必要があるんじゃないかと。
僕は(奥さまのご実家の)厚海家に入ったので、東京とのつながりは死ぬまでなくならない。だけど、東京と長野のつながり方という点で、未だにどれが正解かわからなくて。それをこっちに戻ってきてチャレンジをしている最中です。

「地方の魅力発信する」とか、移住関連の話って、必ず東京をみてますよね。だけど、東京が必要としている情報と、地方から東京へ発信する情報の間には相当、乖離がありますよね。そのバランスの着地って全然見えていないと思います。

僕らだって、生きてもあと数十年だけど、東京にいようが、こっちにいようが未来を面白くする手段って一緒だろうって思うんですよ。

東京のなにかで売れて、それが経済的に回ってるからって、それは成功なのか(と疑問に)と思います。

ファッションとか、そういうものでも分かりやすいかなとは思うんですけどね。ファッションとかになると、外的資本が入りすぎていてレベルが違うと思うので、「食」ってキーワードで都市と地域はつながりやすいなと思ったんです。
最近は、東京の人は特に安全安心なものに対価を払って生活しているけど、もし食文化という意味で、長野の人が都会的なものを追いかけているとしたら、それは危険だなと思います。ファッションとかはしかたないかもしれないけどね。

授業の着地というか、講師に一番聞いてみたいことは、そういったことですか?

そうですね。要は、この辺の人たちも含めて、地域の人たちはすごいウマイものを毎日食っているはずなんですよ。水も米も。でも、それを特別なこととして思っていないというか。それをお金に換えようと思えば、いくらでも高く売れるものを、あげたり、捨てていたり。それが当たり前なんだけど、そのレベル感って、都会の人からすると特別なんですよね。さっき言ったみたいに、自分たちが特別な資源をもっていることに気づきたい。

その気づいた先にはなにがあるんですかね?

うーん…粂さんの仕事を否定するわけじゃないけど、都会の食のトレンドというのはきっと特別なことではなくて、ぼくらが長野で食べているものも同じ特別感があったりするんじゃないかと思うんですよね。

授業のなかで一定の結論を出す必要はなくて、現状を把握するというか。都会の感覚と、長野の感覚を知るとか、それ辺の判断は会場に任せてしまっていいと思っています。

 まぁ、当日、どういう話にするかって彼女と詰めてはいないんですけどね。

実は、くしくも、もう一つの授業とも内容が「食」ってテーマでリンクしてきてるんですよね。午前は摘み草で自分たちの足元を見つめるという内容に。最近、食関連のワークショップとかいろいろあるじゃないですか。あれって、やりたいけどやらない人たちが、自分の気持ちを納得させるために参加してると思うんですよ。ファストフードとかからは抜け出せないけど、気持ちを納得させるために参加してる。

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牟礼駅前の商店街で厚海さんが奥さまと営むカフェ

少し話は変わりますが、厚海さんが「食」に興味を持ったきっかけはなんだったんですか?

木村秋則さんかな。りんごの自然栽培をして「奇跡のりんご」って話題になってる人と、前の会社で仕事をしたことがあって。最初は「食」というより、「農」ということに興味が出てきたのかな。
木村のじいちゃんと、最近ゲリラ豪雨多いよねって話をしていて。「原因はなんだか分かるか」って言われて。それは海中のプランクトンが減って、海からの水蒸気のバランスが変わったからなんだそうです。それはなぜかというと、山から流れていく川の水が工場地帯を通ったりして汚くなった。でも、そもそもその山の水はきれいなのかというと、例えば農薬とか化学肥料をバンバン使ってまちに流れる以前に、汚くなっている。それから農作物とかの方向に進んでいったので、最初は環境問題からの関心からですね。海の生物は山の人が汚した水で生きてるんだとか、いろいろ考えだして。でも、そういうのを食べないのかといったら食べるし、僕もジャンクフードも食べるし。
木村さんに言われたのは「この時代だから、全部をやめることはできない。でも、10のうち1を引くのはできるでしょ」って。それから、極力そういうものを食べるようになったんじゃないかな。

まず自分の生活を切り替えたことから、仕事関連でもそういう方向に発展していったんですか?

どうして「食」にいったのかな……まぁ、でも青山ファーマーズマーケットの人たちと仕事をしたのは結構大きかったですね。木村さんの話を聞いて、より自然なものを探そうと思ったら、東京だったらファーマーズマーケットにいかないと買えないとか。でも「長野で100円のものを、東京だったら350円かよ」って思ったりはしていたけど。
青山みたいな都市の真ん中でそういうことが可視化されているのは歓迎するけど、僕は本来ならあの構図は各地域で起きていてほしい。これは、うちの兄貴っぽい発想なんだけど、全国からあの場所に農家さんが集まるんだけど、輸送のためのエネルギーを考えるとどうなんだろうって思いますよね。

・・・と、まだまだ話は付きない、厚海さん。続きは、是非会場で!!

聞き手/瀧内貫(まちの教室スタッフ)
サポート/小林稜治(まちの教室スタッフ)

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厚海 俊司(クリエイティブディレクター)
長野県長野市出身。出版社で編集者、広告営業など多岐にわたる業務に携わった後、アメリカのキャラクター・マーチャンダイジング企業においてSPディレクターとして活動。その後、外資系メーカーのクリエイティブディレクターとして化粧品ブランドを中心に担当。その他、ホテル・レジャー事業会社のブランドマネジャーとして、企業ブランディングを行うなど、一貫して消費者とブランドの中間に身を置く。現在は、自身のブランド「PICNIC on the MOUNTAINS」のクリエイティブディレクターとして、長野と東京の2拠点を行ったり来たり。飯綱町のカフェ「TEISHABA」のオーナーでもある。