report

「見えて」いるけど、「見て」いない?

「何が起こるかわからない。でも、きっと楽しいはず!」
そんな予感と期待を持ちつつ授業当日を迎えました。

「しののい まちの教室」スタッフの荻原光人です。
今回の授業では、写真家として活動されている細川剛さんを講師としてお呼びしました。細川さんは、何ヶ月間も森の中でテントを張り写真を撮り続けたり、自分よりも大きな熊に何度も遭遇し危ない目にあったりと、他にもたくさんの逸話を持っている方です。そんな細川さんとコーディネーターの小池さんとの対談形式で行われた今回の授業の様子をご紹介したいと思います。

誰にも予想できない
今回の授業は、幣川(みことがわ)神社という神社の拝殿で行われました。普段、お祭りごとや神事で使われる神社での授業という事で、会場にはいつもと違う不思議な雰囲気が流れていました。

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また、普段の細川さんの講演会では、スクリーンに細川さんが撮った写真を写しつつ授業をするそうなのですが、今回はスクリーンを置かずに細川さんの写真集を見つつの授業となりました。今回、写真集を見ながらの授業形式にしたのは
「リアルに重さを感じる本で写真を見て欲しかったから。本の中に森がある。それを感じて欲しい。」
そういった想いや
「正直スライド使わないとどうなるかわからないけど、小池さんとだったらいつもと違う授業形式の方がもっとわけがわからなくなる。それが、おもしろいはず。」
とスライドを封印して細川さんも新たなチャレンジの気持ちを持って授業に望まれたようです。誰にも予想がつかない授業が始まりました。

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朽ちる自由・死ぬ自由
授業中にコーディネーターの小池さんが細川さんに
「この神社の中で気になった場所はありますか?」
と質問を投げかけると、細川さんはサッと立ち上がり歩き出し
「ここに死んでいる蝉がいるんですよ!」
と拝殿入り口のネットに引っかかって死んでいる蝉を指さしました。

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「この蝉を見た時に心が打ち抜かれて釘付けになりました。この蝉には、死ぬ自由がある。ここには、自然の時間の流れがあるんですよ。」
普段、僕たちが見たらただの蝉の抜け殻にしか思わないような風景も、命を時間の流れを見つめてきた細川さんにはすごく魅了されるものだったようです。

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他にも細川さんの仕事柄、どんな森がすきか?という質問をよくされるという話をしていました。
そういった質問に対しては
「倒木がある森が好き」
と答えるそうです。
壊れていくもの朽ちていくものを自然の流れのまま人間の手を入れずに時間の流れに任せる。自然に朽ちる木がある森に幸せを感じるそうです。そして、木は倒れてしまうことが終わりでなく、倒れてから木が始まるということ。人間の手では作れない、時間の流れのみが作ることのできる大切なものがあることを教えてもらいました。

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見えているものと見ているもの
細川さんに「都会は好きですか?」質問をすると「大好き!」と返事が返ってきます。
都会がきらい!僕の森が好きな人たちのイメージは、そういったものでしたが細川さんは何十年も東京に事務所を持っていたりと東京が大好きなようです。ですが、それにもいくつか理由があって
森の中には、それぞれの生き物ごとに時間の流れがあり、森にいるときその流れを実感するそうです。そして、時間の流れは都会にいるときも、花や木に、古くなったトタンの板など普段私たちが見逃してしまうような場所にたくさん見つけられ、見方を変えるだけで都会にいても森と同じように時間の流れを感じられるそうです。私たちが普段見ているものも意識を変えることで見えかたが変わってくること。そして、見えてるけど、見ていないものがたくさんあることを学びました。

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そして、小池さん細川さんが最後におっしゃっていた
「見えているものに対していい悪いで判断するのでなく、その見えているものに対して自分の想いを話せることが大切だと思うんです。
「だれかのためでなく自分のために見る。」そんないろんな見方をしている人がまちにたくさん増えていったらまちがきっともっと楽しくなるんじゃないか。」
という言葉もすごく印象的でした。

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授業の中では、縦横無尽に拝殿内を歩き回って話をされたり、話の途中でも思いついた事があると
「…というわけなんですけ……せやせや!!それでな、こんなことがあってな!」と30年東北地方にいても抜けないと言っていた関西弁で興奮気味に話をされたりと「頭で考えるよりも先に体が動いてしまう。」そんな言葉がピッタリと感じる細川さん。小池さんが「本人に会ってもらえば人柄がわかる」と言われていたようにとっても魅力的な細川さんの授業でした。

(しののい まちの教室スタッフ 荻原光人)

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細川 剛(写真家)
1958年、兵庫県西宮市生まれ。北里大学獣医畜産学部獣医学修士課程修了。在学中より青森県十和田を中心に、東北地方の自然とそこに生きる人々の生命を中心に撮影を続けている。森の中でのテント生活を繰り返し、森に満ちる生命の営みを見つめる独特な目線には定評がある。最近は岩手県盛岡市にも拠点を持ち、より足元での様々な生活や時間の流れに関心をよせる。