report

「図書館」の機能を読み直す。

20150124024_01

今回の授業は「演出家 花井裕一郎さんに学ぶ『ワクワクする図書館』のつくり方」。
花井さんと言えば、今や全国的に有名になった小布施町の図書館「まちとしょテラソ」の仕掛人です。今はその運営からは離れていますが、小布施に住み続けながら全国を飛び回り、まちづくりのアドバイザーとして活躍をされています。

そんな花井さんから学んだ、「ワクワクする図書館」のつくり方。
今回は3つのポイントにまとめてみました。

20150124024_02

「ルール」を読み解く 
みなさんは「図書館法」って知っていますか?図書館のあり方を定めた法律なのですが、そこにこんな一節があるんです。

郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード及びフィルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視聴覚教育の資料その他必要な資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。

つまり、ぼくらのイメージにあるような「図書館は本を貸し出す場所である」と限定されたことはどこにも書いていない。そこに気づいた花井さんは、まず住民のみなさんとワークショップを通じて、図書館法をひもとくことからはじめたといいます。
こういった「ルール」は、つい行動を縛るものとして捉えてしまいがちですが、裏を返せば「ルールで禁止されていないことなら、なんでも挑戦してみてもいい」ということでもあります。制約が、逆に自由な発想を広げていくための基本の枠組みになる。
この発想の転換の仕方がとても痛快で、「こ、これが戦略というものか……」と思わずうなってしまいました。

20150124024_03

妄想をふくらまそう!
「発想の転換」は、花井さんが重要なキーワードとして挙げていたものの一つです。法律とは種類は違いますが、もう一つ、ぼくらを縛っているもの。それは「既成概念」です。図書館では飲食をしてはいけない、図書館では静かにしなければならない……。こうした思い込みが可能性を奪い、ワクワクできない状況を作り出してしまっているのかもしれません。
では、既成概念を打ち破るにはどうするか。それは妄想だと、花井さんは言いました。「こんなことができたらいいな」と妄想を広げて、それを人に言う。それを聞いた人はそこに「こんなこともできたら楽しい」と上乗せしてもらう。そうしてどんどん発想の転換を呼び込んでいく。
この話を聞いていると、ふと「一人の妄想」を「みんなの夢」に変えていくプロセスのように感じました。

20150124024_04

おもてなしの気持ち
そして、最後の一つ。花井さんのお話の端々に現れていたのが「おもてなし」という言葉です。これはぼくだけではないと思うのですが、図書館をはじめ公共的な施設には「来たい人が来ればいいんじゃない」という引きこもったような雰囲気を感じることが時々あります。
ですが、花井さんは「来た人に楽しんでもらうためにはどうしたらいいか」「行きたいと思う図書館になるにはどうしたらいいか」という観点からしてきた工夫を、まさに花井さん自身がワクワクしている様子で話してくれました。
もちろん、飲食店などとはおもてなしの種類は違うと思います。ただ、今回のテーマでもある「ワクワクする図書館(場所)」をつくるためには、徹底的に使う人目線になって考えてみる。おもてなしというのは、お客さんに言われるがままに尽くすことではなくて、お客さんが楽しい時間を過ごすお手伝いをすることなんだと感じました。

20150124024_05

授業の最後には参加者同士で「こんな図書館があったらいいな」と妄想を広げ合う時間に。少し聞いただけでも「置いてある本が買える図書館」「自分が作り手になれる図書館」など、妄想を重ねていきたくなってしまうアイデアがたくさん出てきました。

20150124024_06

「発想の転換」という言葉そのものは、あらゆる本や講演で見聞きします。ですが、その転換の仕方は千差万別。そんな中で花井さんがこれまでに実践してきた、縛られていることを逆手に取って、より自由に動く方法。そして、他の人の視点、使う人の視点を取り込む方法。そしてなにより、花井さん自身がワクワクしていることがひしひしと伝わってくる語り方。
つまるところ、テクニカルなことより、まずは自分が誰よりもワクワクすることが周りにもそれを伝染させていく秘訣なのかなと思いました。

(まちの教室スタッフ 小林稜治)

===

花井裕一郎(小布施まちとしょテラソ 初代館長/ NPO法人オブセリズム代表)
1962(昭和37)年、福岡県・筑豊に生まれる。小布施町在住。演出家。小布施町立図書館まちとしょテラソ前館長。NPO法人オブセリズム CEO。
1989年〜1994年、フジテレビジョンにて番組演出。1994年〜1996年、NHK、TBS、日本テレ ビ、東芝EMIにて番組、PVの演出。2000年より長野県小布施町を拠点とする。2002年、小布施堂文化事業部長に就任。2003年〜2009年 「60秒シネマコンペティション」事務局担当。2007年より「おぶせTシャツ畑」ディレクター。
2007年12月〜2009年7月、小布町立図書館館長として新図書館準備室勤務。2009年7月〜2012年11月、小布施町立図書館「まちとしょテラソ」館長。
「ないのにある」=「存在そのものは目に見ることが出来ないが、そこにはエネルギーが存在する」ことを体感しながら、本来の人間の姿・生き方を模索し、創作活動を展開。
主な映像作品は、「中田久美 密着400日」(1992)、NY、ブラジル、ジャマイカ、プエルト・リコ、ドミニカ共和国、キューバ等の音楽ドキュメンタリービデオ演出 (1996〜2001)、ROEN MOVIES(2001)、OBUSESSION MOVIES(2001〜2007)、ドキュメンタリー「カカオロード〜歴史に刻まれた生命の糧〜」(監督、2004)、THE MODS「LIVE WITH ROCK’N’ROLL」プロモーションビデオ(2004)。
著書『はなぼん〜ワクワク演出マネジメント〜』(文屋)
関連図書『しあわせな仕事の見つけ方、つくり方〜共感・応援の時代の仕事道〜』(ワニプラス、久米信行著)